禁断兄妹
第63章 聖戦
揺れるフロア
伸ばされた無数の手がうねり
波を描く。
ランウェイの先端に辿り着いた俺は
両手を広げ
王のように熱狂の海を睥睨しながら
それでも
どうしても
焦燥感が
消えなかった。
集中力が切れているのか
頭の中に
夜道を駆けていく萌の姿が
勝手に何度も再生されて
その度に
違和感にも似た不安に揺さぶられる。
心配だとはいえ
あの光景が
どうしてこんなに胸をざわつかせるのか
フロアに視線を回遊させながら
また無意識に再生されるのは
振り返らない
萌の後ろ姿。
‥‥
あれはなんだ‥‥?
今度はスローで映し出されたその中に
僅かに映り込んでいる
黒い人影に気がつくのと
俺の心臓が
ドクンと強く脈打ったのは
同時だった。