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禁断兄妹

第75章 禁断兄妹8th プロローグ



───いってきます───


お兄ちゃんがニューヨークに旅立ったのは
私が中学一年生の時
二月の良く晴れた日

頭の怪我をきっかけに半年分もの記憶を失い
お父さんが亡くなって
お母さんの妊娠がわかって

そんな混乱の中
お兄ちゃんは旅立った。


───俺も君達と一緒で、叶えたい夢があるんだ───


───世界中のランウェイを歩くんだ。GUCCIやDiorだって、今に歩いてみせるよ───


お兄ちゃんはその言葉通り
その年のニューヨークのファッションウィークで華々しいデビューを飾ると

あっという間に
四大ファッションコレクションのランウェイを歩いてみせ
GUCCIやDiorのランウェイを歩くようになるまで
時間はかからなかった。

人種も性別も超えた魅力

お兄ちゃんはそう評されて
名だたるビッグメゾンのランウェイを歩き
広告に起用され
トップモデルの道を駆け上がっていった。

和虎さんは
モデルをしながら有名なフォトグラファーのアシスタントを始めて
今は主にフォトグラファーとして活躍するようになった。
ファッション業界にはたくさんのお友達がいることもあって
あちこちの現場からひっぱりだこみたい。

灰谷さんは
大みそかの格闘技大会のトリを務めて再び勝利した後
格闘家から引退しパティシエに転身することを電撃発表した。
元格闘家が作る繊細なお菓子は話題となり
ご両親と開いたお店は大人気になっている。

お母さんは元気な男の子を生み
赤ちゃんを翼(つばさ)と名づけた。
自由に羽ばたいて欲しいという願いと
お父さんの巽という字に似ているというのが本当の理由みたい。
翼の子育てに毎日大忙しだけど本当に幸せそう。

そして私は
フルート奏者になる夢を胸にレッスンと勉強を続けて
音大の付属高校に入学し
音大へ進学した。

失った記憶は結局戻らなくて
大人の男性との接触は無理のままだけれど
日常生活に支障はなく
元気に過ごしている。

タカシ先輩とは高校と大学が一緒で
音楽に勉強に
ずっとサポートをしてもらっている。

周りからは付き合っているのと聞かれることもあるけど
恋愛関係ではなくて
私にとってタカシ先輩は音楽の先輩であり恩人
和虎さんや灰谷さんと同じく
尊敬する人の一人。


私は今
大学二年生

二十歳

恋人はいない。

フルートと六歳の翼が
私の恋人。

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