テキストサイズ

禁断兄妹

第90章 禁断兄妹 The Final Season プロローグ 


KENTAROを包んだ光は
やがて辺りの空気に溶けるように
静かに消えていった。

愛に満ちた荘厳な瞬間
目にすることができた奇跡を
俺は一生忘れないだろう

腕の中の萌に視線を落とすと
俺を見上げている潤んだ瞳

同じ想いに胸を震わせている
俺の愛しい人

もう行こうか

囁くと
萌は瞳を笑顔に細め
頷いた。


最後に母さんの墓の前で
萌と並んで手を合わせる。

こうして萌と共に手を合わせることが
ささやかな夢だった。


母さん
父さん

ありがとう

俺は行くよ


祈りを終え
KENTAROに感謝と別れの言葉を口にすると
まだ動けず言葉もなかったKENTAROが
ぽつりと
君がさっき言っていた巽の手紙を俺にくれないか、と言った。

俺の心は決まっていたが
KENTAROに渡してしまってもいいか
問い掛けるように萌を見ると
晴れやかな表情で頷く

俺は父さんの手紙を
KENTAROへ手渡した。

ありがとう、と
二つの手紙を大事そうに胸に抱き
KENTAROは俺と萌に
またな、と言った。

穏やかな笑顔だった。

ええ
また
きっと

俺も微笑んで
萌も泣き笑いで

そして俺は萌の手を取って

歩きだした。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ