禁断兄妹
第9章 運命の出会い
父さんは本格的に転勤の準備に動き出した。
君島さんと籍を入れ
忙しい仕事の合間を縫って
不動産屋や引っ越し業者と調整を始めた。
今まで住んでいたこのマンションは売却
もう戻ってくることもないから
当たり前と言えば当たり前だけど
もしかしたら父さん
君島さんをマンションに呼んで
この街に住み続けることに抵抗があったから
東京行きを決めたんじゃないのか
母さんの思い出から
逃げようとしてるんじゃないのか
でも
口には出さなかった。
俺の家じゃない
父さんと母さんが二人で買った家だ
どうしようと父さんの自由だ
悔しければ
いつか俺が自分の稼いだ金で買い戻せばいい
それまで思い出は
胸の中にあればいい
俺は
自分にそう言い聞かせた。