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禁断兄妹

第15章 嫉妬‥‥暗い炎


「戻ってきてくれたのか、柊」


今家にいることを告げた俺に
父さんは明るい声を出した。


「違う。荷物を取りに来ただけだ。留守中に黙って来たことが嫌だったから、電話した。もうここには帰ってこない」


俺の言葉に
父さんが黙り込む。


「今まで何不自由ない暮らしをさせてもらった‥‥感謝してる。でもこれからは一人で生きてみるつもりだ。
 死ぬほど苦労しても、ここにいるよりはましだと思ってる」


「大学も、辞めるのか」


父さんの印を押せばいいだけにして家へ送った
退学の書類を見たんだろう。


「ああ。悪いけどそうさせて欲しい」


「本当にもう帰って来ないつもりか」


「ああ」


「本気か」


父さんの声は
少し震えていた。


「本気だ」


俺は静かに答えた。

父さんは力なく息を吐いた。


「俺の言うことなどもう信じられないだろうが‥‥俺はお前を愛してる。失いたくはない‥‥」


俺は少しだけ

ほんの少しだけ

胸が痛んだ。

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