禁断兄妹
第21章 同じ世界
この唇からは
『萌』って私を優しく呼ぶ声
もう聞こえない
このいくつも指環をつけた綺麗な指は
もう私の髪を
すくように撫でてくれそうもない
この瞳は
もう
違う世界を見てる
私は
鼻の奥がつうんと痛くなるのを
感じた。
お兄ちゃん
あの日
俺を刻み込むって
俺の爪痕だって
言ったね
その爪痕は
私の身体から夜毎真っ赤に浮き上がって
私を苛むよ
この傷が消える日は
来るの
私は一人で
ただ
時が過ぎるのを待つしかないの
どうすればいいの
「この顔とかもいいー!いやーんキラースマイルっ!」
たかみちゃんは私の肩をぺちぺち叩きながら
ねっ?と私の顔を覗きこんだ。
「‥‥萌ちゃん‥‥?」
たかみちゃんが息を呑んで固まる。
「ど、どしたのっ?!えっ、え‥‥っ?!」
私は
泣いていた。