禁断兄妹
第36章 話したいこと
二人だけのエレベーター
はあはあと
萌の荒い息が響く。
手に持ったバッグとコート
慌ててつかんで走ってきたんだろう
床を引きずってる。
「‥‥もう少しいろって、言っただろ」
「だっ、て‥‥」
俯いて黙り込む萌
エレベーターが一階につき
扉が開いた。
「ごめんなさい‥‥戻る‥‥」
俯いたまま
萌は蚊の泣くような声で呟いて
もう一度病室のある階のボタンを押した。
「‥‥バカ」
俺は萌の腕を掴むと
引っ張り出すようにエレベーターを降りた。
「!!」
萌の手を取ったままずんずん歩いて
ロビーを横切りながら手を離す。
「寒いんだからコート着て。バッグ、床についてるぞ」
「え、あ、うんっ」
慌ててコートを羽織ながら
バッグを肩にかける萌
再び歩きだした俺に小走りでついてくる。
「お、お兄ちゃん‥‥っ」
「うん」
「怒って、る‥‥?」
「‥‥ある意味、怒ってる」
「‥‥」
「こんな監視カメラだらけのとこで可愛いことされても、何もできない」
「‥‥え?」
「もう少しいろなんて、建前に決まってるだろ‥‥それくらいわかれよ」
振り返ると
顔を赤らめて立ち止まっている萌
見開かれた瞳が可愛くて
俺は笑った。
「おいで‥‥二人きりになれるところに行こう」
「‥‥うんっ」
走り寄ってきて
俺の横に並んだ萌
どぎまぎと距離を取っているのが可愛い。
「どこ、行くの‥‥?」
「着いてからの、お楽しみ」
俺の言葉に
萌は嬉しそうな中に少しだけ戸惑いが混じる表情で頷いた。
「あ、ホテルじゃないから、心配しないで」
耳元で囁くと
萌は更に顔を真っ赤にして
俺の腕を叩いた。