禁断兄妹
第39章 和虎
穏やかな要の声
俺は言葉を失った。
「見ようと思って見えるものじゃないんだ。ましてや助ける方法なんて、わかりゃしない」
「‥‥」
「一つだけ言えることがある。彼がそうなるのは、決して君のせいじゃない」
諭すような言い方は
この会話の終わりを告げているようで
身体中に震えが走る。
「待てよ、もう一度柊兄に会ってくれ、お願いだ、そうしたら見えるかも知れない‥‥っ」
「無駄だよ‥‥もう見えない」
要は憐れむように俺を眺めた。
力が抜ける。
「そん、な‥‥っ‥‥」
アスファルトの上
沈みこんだ俺は
目の前の要の革靴をぼんやりと見ていた。
「バッドエンドだ‥‥」
要の呟きが聞こえた。
「君の恋も‥‥俺の恋も」
見上げた要の瞳が
悲しげに揺れて
静かに伏せられた。
「さよなら。もう会わないよ」