
禁断兄妹
第60章 嵐の夜③
その夜
夢を見た。
由奈に別れ話をしている俺
目の前の由奈はいつの間にか母さんに変わっていた。
柊
あなた萌ちゃんをアメリカに連れていく気なの?
ああ
しばらくは遠距離恋愛だろうけど
でも将来的にはアメリカで二人で暮らしたい
柊
お父さんと美弥子さんはどうするの
萌ちゃんは大事な娘なのよ
わかってるよ
わかってる
だけど俺には萌が必要なんだ
萌だって俺と一緒にいたいと言ってくれている
柊
お前本気でそんなことを言ってるのか
母さんは父さんに姿を変えた。
それは人さらいと一緒だ
美弥子だって承知するはずがない
兄妹だけで異国に暮らすなんて
柊
俺は絶対に許さない
許されなくたって───
言い返そうとした瞬間目が覚めた。
鼓動がひどく速かった。
喉の渇きを覚えて起き上がり
冷蔵庫へと歩いた。
取り出したミネラルウォーターのペットボトル
立ったまま半分ほど一気に飲み干して口を拭う。
アメリカ行きは萌と離れていた間にもう日本にいる必要性を感じなくて思いついたことだった。
だけど萌と結ばれた今は
二人の生活に相応しい地のように感じていた。
「許されなくたって、連れていくさ‥‥」
その為にも俺は必ず世界で成功する。
力をつけ
富を得て
何不自由ない生活を用意して萌を迎える。
俺と萌が愛し合う為には
日本はあまりにも息苦しい。
