それでも好きな人
第5章 葛藤
美鈴「…!?」
香苗「拓真、ねえいいでしょう」
美鈴「…」
その夜
隣の部屋からは
夫婦の営みが聞こえてきた
聞きたくなくて耳を塞いだが今夜は少し
いつもと
感じが違って…
拓真「好きだよ、君が好き」
香苗「拓真、ンッ…」
拓真「黒い髪も唇も…全部、全部好きだ
聞いてる?」
香苗「うんっ、ちゃんと聞いてる」
拓真「聞き逃さないでね…」
美鈴「…お義兄さん」
すぐには気づかなかったが
今夜の拓真はやたら言葉数が多かった
愛を囁きながら
自分の行為を口に出している
そして極めつけは…
香苗「拓真、拓真好き…」
拓真「僕も好きだよ、君が好き…」
美鈴「…」
拓真の名前を呼ぶ香苗
だけど拓真は一度も香苗の名を口にせず
「君」と呼び
愛を囁き続けていた
目の前にいる香苗と隣の部屋にいる
美鈴に…
拓真「愛してる、愛してるよ、君を」