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華のしずく~あなた色に染められて~

第30章 【剣(KEN)~華のしずく~】 闇に喚ばれし者

 その夜。
 龍伍は子どもたちが寝静まった後、ひそかに荒れ寺を抜け出した。ここ数日、気取られないように後をつけていたくだんの旗本坂本隼人(さかもとはやと)の屋敷の近く、物影に身を潜めていた。龍伍のいる場所からは、坂本の屋敷の門がよく見える。
 坂本家は直参一千石取りの大身である。隼人は今年、二十七歳になるが、とにかく素行に問題が多く、いまだに妻もいない。感情の起伏が激しく、気に入った家臣や女でも、意に添わねば、すぐにその場で手討ちにする。

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