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華のしずく~あなた色に染められて~

第30章 【剣(KEN)~華のしずく~】 闇に喚ばれし者

 浅太は大仰に首を振った。
「違うよ。俺は、ただ兄貴に頭を冷やして欲しくて」
 龍伍が旗本坂本隼人を狙っていると密告した報酬として、これから留五郎の下っ引きとして雇って貰うことになっている―、なぞとは間違っても言わない。
 龍伍は普段は沈着で静まり返った湖のような男だが、ひとたび憤ると、その怒りの炎は怖ろしいほどの勢いで燃え盛る。だからこそ、浅太は龍伍を本当に怒らせたこともない。

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