テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 信成も既にあの掛け軸は幾度も見ている。
「あれは確か先先代の奥方が手ずから描かれたと聞いたことがある」
 信成の台詞に、珠々は目を見開いた。
「では、殿の祖母君様が描かれたのでございますね」
「ああ、が、祖母とは言っても、先先代の後妻に当たられる方ゆえ、血のつながりはないがな」
 信成はしばらく眼を閉じて、思案に耽っていたが、ややあって続けた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ