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華のしずく~あなた色に染められて~

第3章 【華のしずく】~夏雷~

 その時、ひときわ激しい雷鳴が灰色の空をつんざくように轟いた。眩しい閃光が淀んだ空に一瞬輝き、ドーンという何かが爆発するような音が存外に近くで響く。
「雷が落ちたのであろう」
 信成が言う。珠々は心細げな顔で信成を見上げる。
「そのような顔をするな。そちには何者にも指一本触れさせぬ」
 信成が優しく言い、珠々の濡れた髪をひと房手に掬った。

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