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華のしずく~あなた色に染められて~

第5章 【華のしずく】~永久(とこしえ)~

―故郷に帰りたい!!
 珠々の身の内から無性に望郷の想いが突き上げてきた。彼女は無意識の中に着物の懐を片手で押さえていた。この中に亡き良人信成の形見の髪の毛が懐紙にくるまれて大切におさまっている。朱雀の国を離れてからも、これを片時たりとも肌身離さず身につけていた。
 この信成の髪の毛を持って―、信成と共に懐かしい我が国へと必ず帰りたい。珠々は心底からそう願った。

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