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華のしずく~あなた色に染められて~

第5章 【華のしずく】~永久(とこしえ)~

 小鳥の鳴き声が頭上高くかしましく響く。
何もかもがあのときと同じだった。空も樹々も故郷は何一つ変わってはいなかった。
 あれからわずか一年余りしか経っていないのに、随分と長い刻(とき)が過ぎたような気がする。 折しも森の石榴の樹が結実の季節を迎えていた。深まる秋に、枝の石榴の実は紅く熟れ、たわわに実をつけている。
 いつの日か、故郷(ふるさと)の森、初めて二人がめぐり逢った川のほとりの石榴を取りにゆこう―、それは永久に果たせぬ約束となった。

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