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華のしずく~あなた色に染められて~

第6章  雪の華~華のしずく~

「姫さま」
 乳母の柏木がそっと徳姫の袖を引いた。
 徳姫はハッと我に返り、改めて視線を真正面に向ける。が、その刹那、自分を冷たく見つめる眼差しにぶつかった。
―この方が信晴さま―。
 徳姫が秀吉の正式な養女となったのは十歳のときのことだ。この年、信晴(松千代)が元服し、徳姫と信晴の間に婚約の約束が取り交わされた。それを境に徳姫は叔父である秀吉の居城へ移り住むようになった。

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