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華のしずく~あなた色に染められて~

第8章 【雪の華~華のずく~】 三

 貞心院の白い手のひらの先の向こうには、なるほど、椿の樹がよく見える場所にひっそりと佇んでいる。花の色は徳姫の部屋の前の庭にあるのと同様、濃い桃色であった。
「申し訳ございません、梅の花が―」
 折角持参した梅の花は信晴の心ない仕打ちによって無残にも散ってしまった。
 と、貞心院は笑った。
「もう、いいのですよ。それよりも、そなたにお見せしたいものがあるのじゃ」
 徳姫が小首を傾げる。貞心院が心からの安堵の表情を浮かべた。

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