テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】

 が、おふうの仕える千鳥にしろ、更に楓にしろ、主をさしおいて我が身だけが助かる気などさらさらない。二人ともに珠子の方に殉じて城と共に果てる悲壮な決意を固めている。千鳥は幼いおふうには城を出るようにと言ってくれたけれど、父を戦で喪い、更に母や妹までが行方の知れぬ今、おふうのゆくべきところはどこにもない。かえって、一人で城下へ出て、敵方の兵に辱められたりでもしたら一大事である。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ