華のしずく~あなた色に染められて~
第9章 【蜩(ひぐらし)~華のしずく~】
珠子の方と楓はしばし見つめ合った。そこには、おふうなどの窺い知れぬ感情の通い合いがあるようだった。
「参りますぞ」
楓に促され、おふうは珠子の方に心を残しながらもその場を立ち去った。数歩あるいたところで、楓が立ち止まった。珠子の方は同じ場所に立って、楓たちを見送っていた。その珠子の方に深々と頭を垂れ、楓は立ち去っていった。立ち止まった楓の後ろから、おふうも頭を下げた。珠子の方の美しい面には花のような微笑が刻まれていた。が、その美しい双眸に光るものがあったのを、おふうは確かに見た。
振り返った珠子の方の姿を夏の夕刻の陽が包み込んでいた。遠くから降るような蜩の声が響き渡っていた。
「参りますぞ」
楓に促され、おふうは珠子の方に心を残しながらもその場を立ち去った。数歩あるいたところで、楓が立ち止まった。珠子の方は同じ場所に立って、楓たちを見送っていた。その珠子の方に深々と頭を垂れ、楓は立ち去っていった。立ち止まった楓の後ろから、おふうも頭を下げた。珠子の方の美しい面には花のような微笑が刻まれていた。が、その美しい双眸に光るものがあったのを、おふうは確かに見た。
振り返った珠子の方の姿を夏の夕刻の陽が包み込んでいた。遠くから降るような蜩の声が響き渡っていた。