テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第10章 【紫陽花~華のしずく~】一

 三十二歳になる秀吉は既に多くの側室を持っている。側室というのも大方は人質という立場を隠すための体の良いものであり、今更、落ちぶれた将軍家の姫に手を出すことはないのではないか。明子は楽観的に考えていた。しかし、もし万が一、秀吉が自分に夜伽をさせるつもりならば、母より譲り受けた懐剣で差し違えてやるのだと明子は悲愴な覚悟を決めて青龍の国に向かった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ