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「何だ？　何なりと申してみよ」
　珠々は一瞬言い淀んだ。彼女の中で言おうか言うまいかと二つの心がせめぎ合った。が、結局、意を決して、ひと息に言った。
「叔父君のことにございます」
「叔父上―？」
　信成が訝しげな表情(かお)で小首を傾げる。
　これより訊ねることは、更に珠々に勇気を要させた。珠々はそれでも、信成から眼を逸らさずに言った。
「悪しき噂を耳に致しましてござりまする」