テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第13章 【残菊~華のしずく~】一

 侍女のお節介を恨めしく思いながら五喜は廊下を辿り、時寿の居間の前で声をかけた。
「お呼びでございますか」
「お入りなされ」
 時寿が応え、五喜は部屋に入った。
 五喜の顔を見る時寿の顔は冴えない。五喜が物問いたげに見ていると、時寿はわずかに躊躇うような素振りを見せた。
「話というのは他でもない。実はお館様の許へ行って頂きたい」
 それでも思い切ったように言ってのけた時寿を、五喜は茫然と見返した。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ