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華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

「時治様、どうかお信じ下さりませ。私は、まだお館様のお情けを受けてはおりませぬ」
 最初の夜以来、秀吉からのお召しはない。五喜はまだ穢れを知らぬままであった。
「されど―」
 時治の表情が歪む。その眼は暗い絶望に打ちひしがれていた。時治は五喜が既に寝所に召されたことを知っているのだ。あの夜、秀吉との間に何もなかったとは夢にも考えてはおるまい。だが、現実として、五喜を秀吉は抱かなかった。

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