テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

「それはできぬことにござります。たとい二人して逃げたとて、直に追っ手に捕まえられしまょう。形式だけとは申せ、私はお館様の側室、時治様はご信頼も厚いご家臣にございます。その私どもが手に手を取って出奔など致せば、たとえ寛容なるお館様でもそのお怒りは深く、ただであい済みますまい。私はそれでも構いませぬが、時治様は将来のある御身にて、兄上時寿様もおん行く末を殊の外ご案じ召されておられますれば」

ストーリーメニュー

TOPTOPへ