テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第14章 【残菊~華のしずく~】二

 五喜は思いつめた眼差しで時治を見つめた。そう、自分が想う男は時治以外にはいない。時治より他の男に触れられるほどなら、その前に潔く自らの生命を絶つ。それが五喜が懸命に考えた選択であった。
 その眼は悲愴な決意を宿していた。
「さ、早う」
 五喜は時治の胸から素早く逃れ、彼の身体を力一杯遠くへ押しやった。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ