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華のしずく~あなた色に染められて~

第19章 【花紋~華のしずく~】 二

 だから、麗子は何も考えない、喋らない。
 こうやって、大好きな場所に座って、その生命の終わりの日が来るのを待っている。
 麗子はずっと空を見ているけれど、時折、呼ばれれば、信斉を見つめることもある。しかし、視線を向けても、その眼には何も映らず、彼女は信斉を本当は見ていない。ゆえに、麗子を見る信斉の眼が哀しみに沈んでいるのを、彼女は気づいてはいない。

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