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華のしずく~あなた色に染められて~

第20章 【朱夏~華のしずく~】

 その人群の中、藍丸は俯いて歩いていた。前を見ずに歩いていたので、真正面から来た商人(あきんど)風の中年男と危うくぶつかりそうになった。
「危ねぇな、嬢ちゃん、気をつけな」
 男は舌打ちすると、急いでいるらしく後も振り返らずに走り去った。藍丸は益々うなだれて力ない足取りでのろのろと歩く。「嬢ちゃん」と呼ばれたことが想像以上に藍丸に衝撃を与えていた。

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