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華のしずく~あなた色に染められて~

第23章 【夕桜~華のしずく~】其の弐~夕桜~

 こうして、やや離れた場所にいても、ほのかな香りが流れ込んでくる。
―秀継様もこの桜がお好きであった。
 改めて、良人の優しい微笑が瞼に浮かぶ。
―殿、何ゆえ、私一人を残して逝っておしまいになられました?
 帰蝶の瞳から透明な雫が溢れ、白い頬を伝い落ちる。
 その時、背後に人の気配がして、帰蝶は慌てて振り返った。

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