テキストサイズ

華のしずく~あなた色に染められて~

第24章 【夕桜~華のしずく~】其の参~山梔子(くちなし)の夜~

 そうなれば、あの憎い男はさぞ勝ち誇った笑みを浮かべ、皮肉げな眼で自分を見下ろすことだろう。そんな辱めを受けるくらいなら、いっそこの場で息絶えてしまいたかった。帰蝶は我が身の生殺与奪の権すらを握っている男を心から憎んだ。
「このような場所にいたのか」
 いかほど経ったときだろう、ふと背後から強く抱きしめられ、帰蝶は身を強ばらせた。
 耳に馴染んだ秀康の声と共に、ふわりとすくい上げるように抱き上げられた。

ストーリーメニュー

TOPTOPへ