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華のしずく~あなた色に染められて~

第2章 二

 信成が鷹揚に頷く。
「あの時、私は洗濯を終えた後、石榴の実を採って家へ戻るつもりでござりました」
 「あの時」とは、信成に出逢い、突然城へ連れ去られてしまったときのことである。短い沈黙の後、信成は言った。
「家族に逢いたいか?」
 娘が突然に姿を消してしまったのだ、母はさぞ案じ、探し回ったことだろう。だが、珠々はゆるりと首を巡らせた。
「―いいえ」

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