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華のしずく~あなた色に染められて~

第24章 【夕桜~華のしずく~】其の参~山梔子(くちなし)の夜~

 そこで口をつぐみ、秀康はフッと乾いた笑いを洩らした。
「―もっとも、俺の言葉を信じる信じまいは、そなたの勝手だがな」
 秀康の視線と帰蝶の視線がぶつかる。秀康の眼(まなこ)は哀しいほどに澄んでいた。彼の眼から最早、憎しみや怒りは消えていた。それは、帰蝶がこれまで眼にしたことがないものであった。
 その瞳に嘘偽りは微塵もないと、帰蝶は確信した。

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