華のしずく~あなた色に染められて~
第25章 【花屑(はなくず)~華のしずく~】
重なり合うように咲き誇る薄紅色の花々を通して、かすかに木漏れ日が洩れている。寧子(やすこ)は先刻から庭に落ちる春の陽差しを見つめていた。寧子よりやや離れた場所では、幼子二人の無邪気に戯れる声が長閑に聞こえている。時折、思い出したよう吹く春の風に、桜の花びらがわずかに舞った。
まるで夢の中のようにどこまでも優しい穏やかな刻である。ふいにその静けさを破るように、子どもの泣き声が高く響いた。寧子が視線を移すと、上の娘の鞠姫(まりひめ)が二つ違いの妹掬姫(きくひめ)のつむりを撫でてやっている。
まるで夢の中のようにどこまでも優しい穏やかな刻である。ふいにその静けさを破るように、子どもの泣き声が高く響いた。寧子が視線を移すと、上の娘の鞠姫(まりひめ)が二つ違いの妹掬姫(きくひめ)のつむりを撫でてやっている。