片想いの行方
第21章 夕暮れの帰り道
「ははっ、なんで香月が礼を言うの?」
蓮くんが笑う。
だって……
あたしはドキドキしながら、あの時の瞬間を思い出す。
「蓮くん……あたしね……
自分も、プールの中にいるみたいだった」
「プールの中?」
「……うん。
プールの中って、周りの音が聞こえなくなるじゃない?
蓮くんがプールに飛び込んだ瞬間……
あたしも一緒に水の中に入ったような感覚だったの」
蓮くんは後ろ姿だから。
なんだか、いつもよりも素直に話せるかも……。
「…周りの声援が、遠くに聞こえて。
蓮くんの泳ぐ水しぶきとか、反射する光とか、自分の鼓動とか…
最終コーナーのところで、新藤さんの声でやっと我に返った感じで。
それまでは、すごくキレイで幻想的な……
なんだか別世界にいるみたいだったの……」