片想いの行方
第48章 2人の夜
「……ヒメ、いつから歌ってたの……?」
沈黙の中、私が口を開くと
ヒメはだるそうにため息をついた。
「だからボランティアだって言っただろ。
あそこの店員が大学時代からの友人で。
たまたま飲みに行った時に、ノリで付き合ってやっただけだ。
本格的に目指してたわけじゃない」
「……そう……」
だけど、とてもそんな軽い感じには思えない。
ジャズとかバンドのことはよく分からないけど……
何回も練習をしなければ、あんなプロ並みなセッションが出来るわけないもの。
「そういえば、高校の卒業パーティーの時に、中野くんが最後歌ってたね」
旅立ちの歌を歌っていて、すごく上手だった。
みんなが泣いていた光景が蘇ってくる。
「そうだっけ?
俺はその日、誰かにフラれた悲しみで全然覚えてねーな」
「……………!」
その言葉に、ドキッとしてヒメを見ると
ヒメも私を真っ直ぐに見つめていた。