片想いの行方
第50章 真実
「………え?……」
奈々さんが顔を上げる。
……前に美和が倒れた時に、涙を浮かべて心配をしていたこの人なら
話しても問題ないと思っていた。
「美和が、その男の怪我をした原因を作ったことで。
その償いを今もずっと続けてるんです。
休職して、日常生活が出来なくなるくらいだから、相当……」
「ま、待って」
奈々さんはコーヒーを机に置いて、混乱するように俺の言葉を遮った。
「償いって……?」
「その一条がどっかの階段から落ちた時に、美和が……」
「確かに階段から落ちて怪我をしたけど
単なる右足首の捻挫って聞いてるわよ?」
奈々さんは続ける。
「それに、救急車に同行したのは美和ちゃんだけど。
一条さんが落ちたのって、すぐそこの階段で。
美和ちゃんがこのフロアに戻ってきて、“ 少ししてから ” 一条さんの叫び声がしたから。
美和ちゃんが何かしたとか……そんなわけないわよ」