神様の独り言
第5章 神様は朝日を掴む
時間がかかるとは思っていたが…
なかなか出てこない二人に…
酒井は…いささか不安になる…
浴室まで様子を見に行こうかと思ったが…
うっかり…道子様の声を聞いてしまったら…
自分の命が無いことを…酒井は知っている…
前の旦那様からも…十分注意を受けていたからだ…
極力…補聴器をオフにし…
無音でもやり取り出来るよう…酒井は心がけていた…
今は、身の回りの指示を他の使用人と打ち合わせするため…補聴器を入れているが…
気を付けなければならない…
うっかり…
道子様の声を聞いた者は…
人知れず…山で首を吊ったり…
車や電車に飛び込んだりするのだ…
死と隣り合わせの…この仕事…
まるで…ギャンブル…
だが…
元ギャンブル依存症の酒井には…ピッタリな職業なのだが…
他の使用人は…そうは行かない…