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僕はもう君を抱けない

第5章 華緒梨のための第一歩

「部長、華緒梨をちょっと連れて行ってもらっていいですか?俺、電話したいんで。」

「あ、あぁわかった。華緒梨さん行きましょう」

優しく紳士のようにエスコートしながら部長と華緒梨は出て行った

出て行く瞬間の華緒梨の顔はもう何かに怯えている人の顔ではなく1人の女の顔だった。

「俺が見ていたのは演技か…」

つぶやく声は空気に飲み込まれていった。

それから俺は電話もせず眠りについた。

電話?

そんなの嘘だよ?

華緒梨を見ているのが辛くなっただけ。

きっと

ね。

この病室から出て行く華緒梨の顔は一生忘れないだろう

華緒梨は新しい第一歩を踏み出したのだから。

あんな凛々しい華緒梨は久々に見た。

そしてもう、華緒梨が俺の病室に来ることはなかった。

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