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溺れる愛

第16章 冷雨





悪い予感が当たってしまった。


ただただ呆然とする芽依にスピーカーから
やたらと管理人が話し掛けてきていたけれど
諦めたのか、しばらく経ってそれも無くなった。



(なんで……なんで何も言わないで
いなくなっちゃうの……?)



わざわざ郵便で携帯を送ってきたということは
もう連絡もつけられないということで、
近場に引っ越した訳ではないのは明白だ。

それに、あのネックレス。


どうして突き放しておいて最後にこんな物を残すのか。



(これじゃ…忘れられないじゃん…)


家を出るときに手に握りしめたネックレスに視線を落とす。


マンションの住人に怪訝な目を向けられ
芽依は力無く那津の住んでいたマンションを後にした。


とぼとぼと帰路についていると、まるで芽依の気持ちを代弁したかのように
空からは大粒の雨が降り出して、みるみるうちにその雨足は強まっていった。



(那津……どうして…居なくなるくらいなら…
せめて気持ちだけでも言わせてくれれば良かったじゃん…)


最後まで彼は、芽依の気持ちを訊くことを拒んだ。

そして最後の最後まで狡い彼は、
こんな形で、芽依にさよならを告げたのだ。



『やっぱり……好きだよ…那津……』



小さく呟いた芽依の声は、激しくなる雨の音にかき消されていく。



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