
溺れる愛
第23章 この幸せを守りたい
『……酷い……痛くない?』
「たまに疼く感じはあるけど、もう平気」
那津の脇腹には、生々しい刺し傷がくっきりと残されていて
余りの痛々しさに声が震えてしまう。
『ねぇ…こんな事言うのも何だけど…
お義母さまは…どうして捕まらないの?』
「ああ…あいつに直接された訳じゃねぇんだ。
ヤクザか何かを雇ってる可能性が高い」
『そんな…じゃあ、その人達に…?』
「まぁな。学校帰りに急に襲われた。
で、多分病院には根回ししたんだろうな」
『那津は何も言わなかったの?』
「まぁ…変な話、慣れもある…」
『そんな…こんなに酷い仕打ちに慣れちゃうなんて…ダメだよ…』
那津の表情があまりにも切なくて
私はそれだけで泣きそうになってしまった。
「そんな顔すんな。俺はもう、あいつらに屈しなくていい力と仲間を手に入れた」
それは…田所さんや、社員の皆さんの事よね…。
「あと…芽依っていう、すげぇいい女も」
『なっ…にが…』
今のはちょっと…、かなり恥ずかしすぎる…!
「はっ…お前、顔真っ赤」
『だ、誰のせいよっ…!』
そこには凄く穏やかな空気が流れていて
私はやっと、幸せを噛み締める事が出来た気がした。
