溺れる愛
第28章 あなたの深い愛に溺れていたい
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「おい、那津。
いつまでそうやって呆けているつもりだ?」
「…………」
あれから俺は、戦意を喪失して
まるでもぬけの殻の様に毎日をボーッと過ごしていた。
芽依の最後のあの言葉。
震える声で“さよなら”を言われて。
俺は、芽依に何もしてやれなかったどころか
ただただ傷つけた。
こんな事なら再会しない方がましだった。
俺は送られてきた携帯を握りしめて
ただじっと見つめていた。
芽依の携帯も繋がらない。
家も引き払っていて…連絡のとりようもない。
おまけに会社にも居なくて
ご丁寧にあいつは、皆に口止めまでしている。
普段、仕事をきっちりこなしていたんだろうな。
だからこうして、周りの人間が協力してくれているんだ。
「…八年前の仕返しかよ……。」
あの時芽依は
きっと今の俺よりも辛かった筈だ。
大きなため息を何度もつく俺に
誠司が見かねた様に話を切りだした。
「はぁ…。お前がそんな事になるくらいなら
俺があの時芽依を奪っておけば良かったな」