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レンタル彼氏。~あなたがいるだけで~

第3章 初夜。

 二人はそれぞれ財布から六百円を出して賽銭箱に入れた。正面に本尊の地蔵菩薩立像が安置され、その脇に、建礼門院と侍女像がある。美しくもどこか儚げなその面差しは、何故か見る者の心にしきりに何かを訴えかけてくるようでもあり、美奈恵はしばらく魅入られたように女院像を見ていた。
「そろそろ行こうか」
 剛史に声をかけられ、緩慢な動作で立ち上がる。名残惜しげに背後を振り返った美奈恵を剛史が物言いたそうな表情で見ていた。

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