I'll be with you.
第15章 元カノ
「……なんでお前が泣くんだよ」
眉を寄せて困ったようにアタフタする奏斗。
さっきの奏斗からは想像すらできなかった笑顔を見せてくれた。
光も入らないような濁った色をしていた瞳が、
今では私が写るくらい澄んだ瞳になっていた……
《……ほんと臆病者…》
《……ずっと…
………俺は優の兄ちゃん……》
雨が降り出す前から私はあなたのすぐ後ろにいたんだよ……
力なく座り込む奏斗をずっと見てたんだよ……
雨に打たれてずぶ濡れになっても空を見上げているあなたに声をかけることさえできなかった……
でも、あなたから目が離せなくて
車から持って来た、自分の傘とは別の折りたたみ傘を持って
あなたが立ち上がってくれるのをずっと待ってた……
《……俺は優が好きなんだよ……ッ…》
『奏斗はもう頑張らなくてもいいじゃない……ッ』
聞かなくてもわかるよ……
奏斗はずっと優さんの幸せを一番近くで見守ってきたんだね……