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I'll be with you.

第16章 折りたたみ傘

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「受付してくるから座ってろ」


「……へい」



病院に着くなり、俺を歩かせようとしない心。


すぐに受付を済ませて戻ってくると上を見て歩き出す。


「あったあった。あそこだ」


「ここ何回も来てるから俺知ってるよ……」


「俺は初めて来たんだ」


「……そうですか」



いつも歩いている場所を通って、一番遠い場所に座りすぐに携帯の電源を切った。


これがここでのマナーだと思ってる……。



『あら!カナちゃんじゃないかい!

最近病院来てもカナちゃんいなくてさ!』


「お久しぶりです。千代さん

調子はどうです?

また草むしりに夢中になりすぎて運ばれないようにして下さいよ!」



ゲラゲラ手を叩きながら笑うおばあちゃん。

元気そうでよかった……



隣に座っていた心も、軽く千代さんにお辞儀をして営業スマイルを向けた。



『あんたぁ!!

こないだテレビに出てた子かい!?』


「……シィー!」


心は人差し指を口の前に持ってきて、静かに!とジェスチャーした。


そのおかげで、千代さんもようやく小声で話してくれた。



『うちの孫が高校生なんだけどねぇ!

あんたのふぁんで部屋に写真べたべた貼ってなぁ!

テレビ出てた時も孫と一緒に見てたんだけどねぇ!

あんたは偉いよ!偉い!』



心の隣に座って、ベシベシ叩きまくる千代さん。


心はそんな攻撃にビクともせずただ、アハハと笑っていた。



「偉いことなんて何もしてませんよ。

お孫さんに、ありがとう と、お伝え下さい」


『サイン貰えんかね?この手帳でいいから!』


そう言って、カバンの中をガサゴソして手帳とペンを出すと心は嫌な顔一つせず、慣れた手つきで完璧なサインを書き上げた。



「お孫さんのお名前は?」


『ゆいって言うん!

結ぶ愛と書いて結愛』


「いい名前ですねぇー。千代さんが名付けたんですか?」


『そうなのよ!』



なんか仲良くなってる……



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