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手探りな絶望

第6章 溺愛



俺が
グラタンを
食べ終えた頃

まだ
冬実の皿は
半分ほどの
グラタンが残っていた


熱いグラタンのせいか
頬は赤く
ほんとうに
果実のようだ


冷たい
アイスティーを
飲みながら
一生懸命食べてる冬実が
なんだか
とてもかわいらしく

24歳という実年齢よりも
幼く見えて

たまらない



ときどき
正面の俺と
目が合うと

またすぐに
視線を落とし

誤魔化すように
ストローに
口をつけたりする


もっと
見ていたい


もっと
一緒の時間を
過ごしたい


もっと
話しが聞きたい


もっと



知りたい





「佐々木さん」



「・・はい」



「どうして
野球好きになったか
教えてくれる?」



「・・・・・」



やっと
冬実はグラタンを
食べ終えて

スプーンを
皿の上においた




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