手探りな絶望
第8章 懇願
赤い携帯が
静かになった頃
俺は
赤くなった
冬実の首を
唇で愛撫していた
冬実は
俺の服を
しっかりと握ったまま。
「平気?」
「……」
また
曖昧なことを
言ってしまったと思った
冬実の返事が
遅かったからだ。
「電話…よかったの?」
「あ…うん
いいの…今日は…出たくない」
そうか…そんな日も
あるよな
「今日だけ」
「ん?」
「今日だけ…
明日からは
ちゃんと出るから
だから今日は…出たくない」
「分かったよ、冬実」
「嫌いになった?」
「え?」
「ひどくて…嫌いに…」
「ひどくなんてないよ
俺なんか
ずっと親に連絡してねーし
そんな時もあんだろ?
気にすんな
俺は…好きだよ」
「ごめんなさい…」
「え?」
「ごめんなさい…
でも…好き」