手探りな絶望
第17章 抱擁
「柴田さ・・」
「冬実
藤沢くんと
話しがあるんじゃないの?
お母さんは
お父さんと話があるから
2人で
席、外してくれる?」
「お母さん・・」
「お母さんは
もう冬実のこと
なんでも分かってしまうの
さ、お茶でも
飲んでらっしゃい」
「・・・うん・・」
柴田さんと
話しがあるという
冬実のお母さんの言葉に
俺が腰を上げると
冬実は
ちらっと
俺の目を見て
ドアの方へと
ゆっくりと歩き出した
お母さんに
軽く頭を下げて
俺もドアへと近づくと
柴田さんが
部屋の中へと入ってきて
俺に
封筒を手渡した
「悪かったな
早く会社行けよ?」
「・・でも・・」
「ファックスなんか
流しちゃいねぇし
メールも出回ってねぇから
俺の分まで
しっかり仕事やってくれ」
「柴田さんは・・」
「俺は
この病院の近くで
働くことにしたんだ
遠回りしたけどな
これからは
後悔しねーようにやってみるさ
まぁ・・
いい女は
俺に興味ねぇかも
しれねぇけどな」
そう言って
佐々木優子さんの方に
目をむけた
封筒の中は
俺が冬実に渡した
現金だった
「さ、冬実」
お母さんは
柴田さんと話が
あるらしく
俺たちを急かした
そして
冬実が部屋を出る寸前に
もう一度
冬実に声をかけた
「冬実
お母さんは
反対なんてしないからね」