手探りな絶望
第4章 野球
ふと
コンビニの外に
目をやると
佐々木冬実が
小走りで
向かってくるのが
見えた
俺は
急いで持っていた
雑誌を棚に戻し
コンビニの入口に向かった
ちょうど
佐々木冬実が
ドアを開けたとき
俺が目の前に立った
「大丈夫だよ?」
息をあげてる
佐々木冬実に
俺は声をかけた
「えっ…あ…」
俺は、外を指差し
佐々木冬実と一緒に
そのまま
コンビニを後にした
「そんな走って来なくても
まだ約束の時間前だよ?」
佐々木冬実は
ちらっと時計を見て
ホッとした顔をみせた
「よかった…」
癖なのか
よかった…と言う時
佐々木冬実は
必ず片手を胸に当てる
素の顔を見せる
その瞬間が
なんとも言えない
「あ、もしかして
仕事残業だった?」
「いえ、違うんです
メガネを…」
「メガネ?」
「メガネしてることに
玄関先で気がついてしまって…」
「うん
あ、店、こっち
歩きながら話そうか」
「あ、はい」
俺は
ちょっと
浮かれていた
俺と会うために
メガネを外して
わざわざ
コンタクトに
してくれたんだと思うと
なんだか
心がほころんだ
でも
いつも言葉数の少ない
佐々木冬実の話が聞きたくて
俺は
気がつかないふりをした
「それで?
メガネがどうしたの?」