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顧みすれば

第10章 急接近

「常務、ファルーカはどこで?」

常務が一瞬 ん?という顔をした。

「佐々木さん、ファルーカを知っているの?」

「以前少しだけフラメンコを習っていたことがあって」

「そうなの?
 僕は昔少しだけスペインにいたことがあってその時にね」

少し悲しげな表情だった。

「まだ、10代だった頃
 とても愛していた人がいたんだ。
 だけど、僕はその人を失ってしまった

 だからね、ファルーカを踊るとついその事を思い出してしまって‥‥」

なんとなく聞いてはいけないような気がして
それ以上触れることはしなかった。


「ところで、佐々木さん

 そろそろ 常務 はやめてもらえないかな?
 プライベートでまで呼ばれたくはないんだ

 僕の名前は 山下 直哉」

「山下さん?」

「ちがう、直哉だよ。
 亜美ちゃん」

「はぁ。なおや...さん」

常務を下の名前で呼ぶのはかなり抵抗がある

「仕事以外で常務って呼んだら
 お仕置きだよ」

「お お仕置き?!」

常務はニヤリと笑った。

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