テキストサイズ

顧みすれば

第29章 失われた時を

「ところで紗英ちゃん」


おじさまは改まって話しかけてきた


「直哉に会ってくれないか」


私の表情を伺うように聞く。


「直哉さん...」


私の胸がざわつく


「ごめん 無理にとは言わない」


私は黙って唇を噛み締めた。


わかっている。


一度は会って乗り越えなければ


いけないことは。



でも、まだ心の準備が出来ていない...


「アラブの病院で

 紗英ちゃんに逃げられたことが

 相当堪えたらしくてな


 あれから仕事に身が入らない」


ストーリーメニュー

TOPTOPへ